
大竹伸朗展 網膜
2025年8月1日(金)-11月24日(月・休)
休館日:月曜日(8月11日、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、9月16日、10月14日、11月4日
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)では、2013年の「大竹伸朗展 ニューニュー」に続いて12年ぶりに大竹伸朗(1955-)の個展を開催します。大竹は1970年代後半より作品発表を始め、ドクメンタ(ドイツ)やヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)など重要な国際展への参加を経て、近年では東京国立近代美術館を皮切りに愛媛、富山へと巡回した大規模な個展まで、国内外での幾多の展覧会を開催してきました。その半世紀におよぶ活動を通じ、圧倒的な熱量が生み出した膨大かつ多様な作品の数々から、本展では〈網膜〉にフォーカスすることにより大竹の作品世界をさらに掘り下げようとするものです。
〈網膜〉シリーズは、1988年に制作の拠点を移した宇和島のアトリエで着想され、1990年代初頭まで集中的に制作されたあとも、他のシリーズへの展開を伴いながら制作が続けられてきました。網膜とはそもそも眼球の最奥にある、光を感受し視神経を介して脳に情報として伝える機能を担う薄い透明の膜ですが、大竹は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を塗布する絵画作品のシリーズに、この名をつけました。分離している「写真像の色面」と「透明の塗膜層」の2つが私たちの網膜を介して脳内で統合され、「時間」と「記憶」を内包した新たな像として立ち現れます。現在制作中の新作の〈網膜〉でもさらなる更新が試みられる一方で、長期間放置され変質した感光剤は、そこに蓄積する時間を像として刻印し、その像を透明の塗膜層が幾重にも覆うことで、一貫して〈網膜〉が発する情景は未だ見ぬ記憶として見る者を揺さぶり続けます。
こうして新たに創り出された渾身の新作〈網膜〉12点に加えて、〈網膜〉に音と光を組み込んだ、高さ約3mのレリーフ状の新作、そして1990年代初頭に制作された未発表の大型〈網膜〉をはじめとした作品群が核となり、構想時のサイズに更新した大規模インスタレーション《網膜屋/記憶濾過小屋》(2024年)、2010年代半ばから続くグワッシュの連作〈網膜景〉や油彩のシリーズ〈網膜/境〉といった、「時間」や「記憶」を介して〈網膜〉と絶えず往還し続ける作品が骨格となります。本展では、さらに「眼」「フィルム」「写真」から〈網膜〉へと接続する膨大な数の作品をも取り込みながら拡がり続ける大竹伸朗の〈網膜〉世界を展観します。
開館時間 |
10:00-18:00(入館は17:30まで) |
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休館日 |
月曜日(8月11日、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、9月16日、10月14日、11月4日 |
主催 |
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、公益財団法人ミモカ美術振興財団、「瀬戸芸美術館連携」プロジェクト実行委員会(事務局:公益財団法人 福武財団)、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁 |
料金 |
一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円) |
瀬戸内国際芸術祭連携プロジェクト | |
令和7年度日本博2.0事業(委託型) |
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1.大竹伸朗 《網膜/漠悸》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami
2-3.大竹伸朗 《網膜屋/記憶濾過小屋》 2014年 (ヨコハマトリエンナーレ2014での展示風景)©Shinro Ohtake Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo / Photo by Kei Okano

大竹伸朗 Photo by Shimpei Yamagami
大竹伸朗(おおたけしんろう)
1955年東京都生まれ。主な個展に東京国立近代美術館/愛媛県美術館/富山県美術館 (2022-23)、熊本市現代美術館/水戸芸術館現代美術ギャラリー (2019)、パラソルユニット現代美術財団 (2014)、高松市美術館 (2013)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 (2013)、アートソンジェセンター (2012)、広島市現代美術館/福岡市美術館 (2007)、東京都現代美術館 (2006)など。またハワイ・トリエンナーレ (2022)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ (2018)、横浜トリエンナーレ (2014)、ヴェネチア・ビエンナーレ (2013)、ドクメンタ (2012)、光州ビエンナーレ (2010)、瀬戸内国際芸術祭 (2010、13、16、19、22)など多数の国際展に参加。また「アゲインスト・ネイチャー」(1989) 、「 キ ャビネット・オブ・サインズ」(1991)など歴史的に重要な展覧会にも多く参加している。なお、直島、豊島、女木島(女木島は瀬戸芸会期中のみ)で作品を公開している。